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ニュージーランドの『羊』の数は?

突然ですが、「ニュージーランドを紹介する本やパンフレット、ポスターなどに写っている動物は?」

と聞かれたら、何を思い浮かべますか?

私はずばり「羊」です。抜けるような青空の下、青々とした草をのんびりと食む羊の群れ。

今年1月に統計局から発表されたデータによると、2018年6月の時点でニュージーランドで飼育されている羊の数は2730万頭。前年比1%の減少で、人口一人当たりの羊の数は5.6頭になってしまったそうです。下の表からも分かるように、羊の数は年々明らかに減ってきています。

この、どこにでもありそうな光景、ニュージーランドに行ったら、ちょっと郊外に行くだけで、いつでも、どこでも、飽くまで見られるんだろうなぁ、というこの景色をついつい思い浮かべてしまうのです。というのも、私の人生初海外留学先はニュージーランド。羊の数のピークこそ過ぎていたものの、まだまだ「どこにでも羊」な「羊の国」だった時期。そして、ホームステイ先は当時のメイン産業が「牧羊」という地域。加えて、ホストママは羊肉加工会社勤務、ホストパパは羊の毛を刈るシェアラーという家庭だったのです。約40分かかる通学バスから見える光景は、夏場は茶色い丘に茶色い羊、冬が始まるころには毛が刈られたばかりの白い羊、春が近づくにつれ、牧場には再び草が生え始め、柔らかな薄緑の丘でかわいい子羊たちがお母さん羊の周りをピョンピョンはねて遊んでいる、といった具合。ホストシスターにはペット羊が3頭いて、私自身も知人のファーマーから親羊役も拝命し「シロ」と名付けた子羊に数時間おきに哺乳瓶でミルクを与えた時期がありました。家の目の前も牧場(ホストファミリー所有ではないが)で、寝ても覚めても「メェ~、メェ~」と聞こえてくる。と、大変「羊度」の高い一年だったため、私にとって冒頭のニュースは大変ショックだったのです。

さて、同様の質問を周りの友人たちにしてみたところ、私と同じ「羊」という回答をしたのは約4割でした。トップを獲得したのは、ほぼ6割で「キウイバード」。確かに!野生ではニュージーランドにしか生息していない貴重な鳥、コロンとした感じの卵のような体がかわいいキウイ。1位に選ばれて当然ですよね。

そういえば、羊はニュージーランド原産の動物ではないですね。羊たちはいつこの地にやってきたのでしょうか。初めてニュージーランドの地を踏んだ羊は、1773年頃イギリス人のジェームス・クックと一緒にやってきた羊だそうです。一緒に船出をした6頭のうち、生き残っていた羊2頭(オス1頭、メス1頭)を上陸させているそうです。とはいえ、その2頭を親として徐々に羊が増えた、などというおとぎ話のようなことはなく、もともと船旅で弱っていたのに加え、新天地での環境になじめず、すぐに亡くなってしまったのだとか。本格的な牧羊が始まるのは、そこからさらに70年近くたった1840年代で、多くの羊はお隣の国オーストラリアから持ち込まれたようです。最初は北島、徐々に南島にも羊のファームは広がっていったとのこと。イギリスの植民地で「イギリスの台所」よろしく羊肉の輸出がとてもさかんでした。また、世界中で羊毛の需要が高まる中、上質のメリノウールは高値で取引されていたようです。そこから、「to live off the sheep's back」という言い回しも生まれました。「羊の毛で贅沢な暮らしをする」といった意味で、主にオーストラリアやニュージーランドで使われていたようです。羊毛農家がいかに裕福であったか、を示しているといえますね。

牧羊のピークは1982年で、その数は7000万頭にも達していたそうです。この頃の総人口は315万人で、人口一人当たり22頭の羊がいたことになります。冒頭でも触れましたが、36年後の昨年は一人当たり5.6頭。目の前に自分の牧場があったとして、羊を放牧しているところを思い浮かべてみてください。22頭いた羊たちが1/4の6頭になってしまったら、すごく寂しくありませんか。

なぜそんなことになってしまったのでしょうか。2018年の人口は490万人にまで増えたため、同じ数の羊がいたとしても一人当たりの羊の数は相対的に減ってしまうことになります。それに加え、羊そのものの飼育数が減少し、他の家畜(肉牛、乳牛、鹿等)の飼育数が増加したことがあげられるようです。個人的には、約40年前から始まった空前のワインブームも関係していると思っています。というのも、上述の私が留学していた地域で、牧場がどんどんぶどう畑に変わっていく様子をこの目で見てきたからです。ホストファミリーを訪れる度、その道中も含め着実に増えていくぶどう畑。家の目の前にあった牧場も8年ほど前にぶどう畑に変わりました。なんでも、羊を育てるより数倍儲かるのだとか。そういえば、今住んでいる地域では、牧場が宅地に変わるパターンもよく見受けられますね。

今後、羊の数はますます減っていきそうな感じもしますが、いつまでも「ニュージーランドといえば羊」「羊の国」のイメージがことごとく崩れてしまわないように頑張っていってくれることを願っています。

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