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先生のストライキ


今年の5月29日は、子供が大喜びの学校が休みの日。でも休日ではありません。そう、先生がストをする日です。ニュージーランド史上でおそらく最も規模が大きいとされる今回のストは、「メガ・ストライキ」と呼ばれていて、NZEIとPPTAという2つの主要な教員ユニオンに所属する5万人もの教員が同時にストを行う予定のため、80万人もの生徒、そしてその親に影響が出ると予測されています。

ニュース動画では、先生による「賃上げ要望」のデモ行進の模様が映し出されています。中にはデモ行進に先生と一緒に加わっている生徒もいるようです。「私の先生の給料をもっと上げて!」などと書かれているプラカードを持っている子供や、先生の表情には深刻な様子はあまりなく、何か微笑ましい感じもします。

突然のストライキは、親にとっては当然寝耳に水。NZでは14歳以下の子供だけで家にいることは法律で禁じられているため、大人の保護者が一緒でないといけません。ある程度余裕を持って、学校側からスト決行日が通知されるとはいえ、その日をどうやり過ごすかを計画・アレンジするのは、働くお母さん、お父さんの頭痛の種です。アフタースクール・プログラムなどの学童保育的なものは、あくまでも放課後に行われるためのものなので、平日の朝から子供の面倒をみるサービスはほぼ皆無といってよいでしょう。仕事を休めない親は、子供を自分の親や親戚、手が空いている友人に預けるしか方法がないのが辛いところですね。

日本での先生のストライキは、最近耳にしない気がします。60年〜70年代には日教組組員によるストが何度か行われていたことを覚えておられる方もいるかもしれません(??)が、最近ではそのような骨のある先生はいるのでしょうか。いるとしても、おそらく危険思想の持ち主なのでは?と保護者からクレームが出るかもしれませんね。

NZではつい最近、医師によるストライキがあったばかりですが、影響人数という側面では、教員によるストに比べるとはるかに小さいですが、人命に関わる可能性もある分、影響がある人にとってみれば、深刻度ははるかに大きくなる可能性もあります。幸い看護師はストの対象でなかったので、病院やクリニック自体が休みだったわけではありませんが。

Wikipediaの「ストライキ」の項目には、1990年代以降ストが激減したことの長所・短所ということで、最後に一文記述があります。「ストライキの激減のメリットとしては、公共サービスなどかつてストライキの多かった業種でのサービスの確実性がある。デメリットとしては労働運動が雇用確保の手段とならなくなったことが社会に周知され、結果雇用者の身分が不安定になったことである。」

ストがあるというのは、その国が良くも悪くも自由とパワー、そして許容力があるという証拠かもしれませんね。

最後に、ストライキのことで避けては通れない事柄に触れなければなりません。3月のクライトチャーチで起こった銃撃事件の日のことです。この悲劇ばかり注目されてしまいますが、この日は、世界の(主に欧米諸国だと思いますが)子供達にとって特別な日でした。2018年にスウェーデンから始まり、世界に広がった「FridaysForFuture=地球温暖化・環境破壊阻止のために、メッセージを発信し続ける運動」のために、子供達が一斉に行動を起こしたのです。NZ国内でも、生徒と先生が合同でストライキを行ない、授業を行う代わりに、街でデモ行進をしていた学校もありました。ストをしない学校でも、ポスター作りなどの学校内アクティビティーで参加していたところが数多くありました。もちろんクライストチャーチでも、この子供達によるスト、デモはありました。本来ならば、その日のクライストチャーチのトップニュースは、この元気な子供達の映像だったかもしれないのです。銃撃事件の悲劇の陰に隠れてしまった印象のある、この子供達の結束力とメッセージ。未来に向けて繋いでいくのは大人の役目です。

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