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クライストチャーチの銃撃事件によせて


被害者遺族と負傷者への支援

クライストチャーチの銃撃事件が発生して10日が経ちました。世界的なニュースとして今なお注目されているため、この惨劇の詳細と、ジャシンダ・アーダン首相をトップとするNZ政府の対応については、ご存知の方も多いのではないでしょうか。アーダン首相は実行犯について、悪名をはせようとしたのだろうとし、命を奪った者ではなく、奪われた人々の名前を語ってほしい、そして彼の名前を口にしないことで、我々ニュージーランド人は彼に何も与えないと声明の中で強調しました。

【政府の対応】

平和国家としてのNZの立場、対応を明確化し、支援の具体的内容を発表しました。

・早期の銃規制法案をまとめる

・負傷者と被害者遺族の方への支援の名言

【ACCによる支援】

NZの医療補償機関ACC(Accident Compensation Corporation)が永住者、訪問者(永住者の親族や観光客など)に関わらず被害者の遺族を前面的にサポートすると表明しました。

・負傷者は長期的な医療ケアを費用無負担で受けることができる

・NZ国内で労働している者は、週単位で補助を受けることができる

・全犠牲者の葬儀費用の負担

・犠牲者の配偶者、子供への生活費支援

【民間の支援】

さまざまなレベル、方法で草の根支援が行われています。

・各ボランティア・支援団体が寄付金を募り、ボランティア人材を被災者やイスラムコミュニティーに派遣

・個人レベルにとどまらず、学校や福祉施設、企業、団体など、組織ぐるみでの追悼・お見舞いメッセージ、献花など

・マオリのギャング組織Mongrel Mobのメンバーが事件現場周辺の警備を行うとともに、他地域でもイスラムコミュニティーをサポートすると申し出る。また今回の事件を受け、メンバー間で使用し続けてきたナチス的な挨拶儀礼を廃止するとの声明を出した(*)。

*白人至上主義と正反対の軸にいるマオリのギャング団がナチス儀礼を取り入れるのは矛盾しているように思えるが、これは彼らが「人々に嫌われている」というのを自覚し、それなら歴史的にも忌み嫌われているナチ流儀を取り入れ徹底的に嫌われよう、ということで始まった経緯があるらしい。ギャングメンバーによる被害者支援は、神戸震災時の山口組組員による、救助、支援活動を思い起こさせる。

ジャシンダ・アーダン首相の毅然とした態度や、早期の銃規制法の強化についての断言は、はかならずも「ニュージーランドはアメリカと違う」ということを世界にアピールする結果ともなっているようです。

 アメリカのNRA「全米ライフル協会」の「銃が悪いのではなく、人が悪いのだ」という見解に真っ向から反しているように見えるアーダン首相の主張ですが、NRAはNZの銃「賛成派」に対して「協力できることがあればなんでもする」というメッセージを出しており、アーダン首相には「キウィはこうなんだ」という明確なメッセージとともに、抵抗勢力に負けず、銃規制法案の成案に向けてがんばってほしいと願います。

悲劇は人の結束力を強くする

銃撃事件の発生したモスクのみならず、全国のモスクや、イスラム教徒の集会地には献花やメッセージが置かれ、NZに住むたくさんの人々が今回の事件について悲しんでいる様子が、ニュースでも映し出されています。筆者はこれを見て、17年前のことを思い出しました。

 私は2001年9月11日のいわゆる9/11テロ攻撃の二週間後にニューヨークにいました。ニューヨーク在住の友人に会うため、9/11以前にすでに航空チケットを予約し、国際免許も取得していたのですが、この事件で渡航を躊躇したのも事実です。しかしこの機を逃したら後悔するのでは?という思いの方が強く、NYC行きを決行し、厳重警戒のこの街に一週間近く滞在しました。

 このとき感じたのが、ニューヨーカーの優しさ、温かさです。空港のタクシーで「Thank you for coming」と言われた時に、来てよかったんだと確信をしました。世界貿易センター跡地=グランド・ゼロは戦災地か、震災地かという状況で、多くの人々が献花や追悼のためにこの場所を訪れていました。今、クライストチャーチで見られる光景と全く同じです。

平和とは...

2011年のノルウェー、2017年のスウェーデン、そして2019年のニュージーランド。たとえ平和と思われる国で生活していたとしても、その「平和」とは与えられるものではないということを、痛感させられる出来事です。しかし、その悲劇によって人々がより「平和」を意識し、それを維持しようと実行に移すことにより、こういった悲劇が起こりにくい環境になるのではないかと思います。キウィ自身による、NZは「世界一平和な国」であるという意識はとても高いように思います。これを機に、ますます安心して暮らせる国になるのではないかと信じています。

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