小さな親切をリレーに
”Pay it forward”という言葉、聞いたことがありますか?
同名タイトルの映画が2000年にアメリカで公開(日本では『ペイ・フォワード 可能の王国』というタイトルで2001年に公開)されたこともあり、聞いたことがある方も多いと思います。当時12歳だったハーレイ・ジョエル・オスメントが主役トレバー役(中学1年生、11歳という設定)を務め、話題になりました。
”Pay it forward”とは自分が他の人から受けた親切や恩をまた別の人に渡し、そして、渡された人がまた別の人に、別の形で渡して、という風にどんどん他の人に送っていく、ということです。日本語では『恩送り』と呼ばれたり、ことわざの『情けは人の為ならず』で説明されたりすることも多いようですね。
どこの国で生活していても、小さな親切を受けることはあると思いますが、ニュージーランド人のさりげない親切心には心温まることが多く、これを”Pay it forward”しよう、という気持ちにさせられることが多々あります。
先日八百屋で卵1トレー(30個入り)を買った時のことです。車のカギはなんとか解錠したものの、卵の重みで少しフニャッとした紙トレーを両手で持ち、どうやってドアを開けようかと一瞬途方にくれた私。すると、アブダカダーブラ!車のドアが自動で開いたのです。なんてことはなく、ちょうど私の横に駐車した男性がスッと無言でドアを開けてくれたのでした。知人や友人でもない、その場で出会ったばかりの男性です。私が「ありがとう」と言うと、当然のこと、と言わんばかりにまた無言で去っていきました。とってもホッコリした気持ちになり、すごくうれしかったのです。それからしばらくして、とあるスーパーマーケットの駐車場付近でのこと。松葉杖をついたおばあさんが使い終わったショッピングカートを所定の場所に戻そうとしています。ですが、地面に少し傾斜があるため片手でカートを動かすのに四苦八苦しているところに出くわしました。私はスーッとおばあさんのところへ。「戻しておきますよ」と声をかけて、カートを置き場まで持って行ってあげました。おばあさんはホッとしたようにニコニコとして、感謝の気持ちを伝えてくれました。
この時私は「今だ、”Pay it forward”しよう」と思っていた訳ではありません。でも、困っている人を助けてあげられてうれしかったな、と思った時に、そういえば、とドアを開けてくれた時の光景が浮かんできたのでした。よかった、私が受けたうれしさをあのおばあさんにつなげることができたんだな、と。
小さな親切。もらった親切をまた他の人におすそ分けして、もしまたその人が別の人に渡してくれたら。世の中もっと住みやすい場所になる気がしますよね。特にすっごく時間がかかる訳でも、大金をださなければならない訳でも、複雑な処理が必要な訳でもない小さな親切。ドアをちょっと押さえて待ってあげたり、大丈夫なのかどうか確認してあげたり、席を譲りあったり、そうやってお互い気持ちよく過ごせるようにできれば良いですね。
そして、ニュージーランドで受けた親切を日本でつなげていくということもできますね。短期なり長期なり、留学して現地の人と生活したり、勉強したりという経験をすると「外国人として暮らす」ということについて色々考えることになると思います。「この国って、なんでこうなの?」と戸惑った時、「あ、これってどうすればいいんだろう?」と困った時に話を聞いてもらったり、アドバイスをもらって気持ちがスッキリした経験、ありませんか?きっと日本に住んでいる外国の人も同じような気持ちになることがあると思うんです。もしかして、今困っているかも、という瞬間にサッと手を差し伸べてあげられたら、きっと日本での思い出がより素敵になり、印象もグーンと上がると思います。そのすばらしい思い出の一部に自分がいると思うとなんだかうれしいですよね。
”Pay it forward.”小さな親切をどんどんリレーしていきませんか。自身のニュージーランド留学経験もよりすばらしいものになるかもしれませんよ。